3.世界で一番。

中へ入って最初に見たのは、音響効果のブース。
音響担当は、コリン・ボーランドさんだ。

「コリンはね、音響技術で世界一なのよ。
さっき、サラは完璧主義者だと言ったけど、
スタッフは皆、照明でも、舞台技術でも、
世界トップクラスの人達が集まってるし、
機材に関しても最先端の物を使ってるの。
サラは、何でも一番や、最先端が好きなのよ(笑)」

ガイドのシュウ・メイさんがおどけながら言う。

「その中でもコリンは別格。本当に”世界一”なの。
トップ5でも、10でもなくね。ナンバー1よ。
ライヴの企画は彼のスケジュールを真っ先に確認して、
彼が空いてなければ中止になっちゃうの。
サラはそれほど彼を、信頼しているのよ」 

コリンさんは各会場の実寸、床や壁等の素材、
客の人数、気候、天候などあらゆることを
計算した上で、音がどんな風に反響し、
また吸収されてしまうかを割り出して、
全体の音の大きさや、楽器と声のバランスを
調整するのだそうだ。

同じ会場で連日やる場合でも、
毎回時間を掛けて、チェックし、調整する。
先ほどホールで待たされていた間にも、
それが行われていたのだ。

一般の客でその違いを聴きわけられる人が
どれほどいるだろう、と思うけれど、
最高の物を見せたい、という思いが伝わってくる。
サラを初め、演奏者やダンサーは、それぞれ
型を取って耳の形にぴったりあわせたイヤフォン
を装着して公演に臨む。

そのイヤフォンには4つのマイクロスピーカーが
内蔵されていて、どの場所でどんな体勢でいても、
同じ音量・バランスの音が聞こえるようになっている。

 

当日は日本でのツアー最終日なので、スタッフも
舞台の前で記念写真を撮ったりして、はしゃいでいた。
なんだか、楽しい雰囲気だ。

常駐スタッフは同じ人がツアーに同行するが、
毎回100名ほど現地の人を雇うらしい。
舞台装置の組み立てに、当初6時間掛かったが、
最終的に3時間ほどで済むようになったそうだ。

「日本のスタッフは、本当に優秀。時間に正確だし、
真面目にテキパキとやってくれるから、助かるわ。
北米人とかはねぇ・・・楽しく仕事をしてくれるんだけど、
ちょっと怠け者なのよね〜(笑)」

私達へのリップサービスだろうが、シュウ・メイさんが
そう言ったその瞬間、向こうにいた欧米人スタッフから
「きゃはははは〜!」
と大きな笑い声が。

「ほらね、あんな調子よ。暢気なもんね」

おどけて、目を回すシュウ・メイさん。
あまりのタイミングの良さに、一同ウケる。

「それじゃあ、次はステージを見ましょうか?」

シュウ・メイさんの誘導により、一同アリーナ中央へ。
以下、次回。