女はソレを我慢できない。

うちの母はトイレのない所に限って尿意を催す人であった。

なので車で遠出する際などは、子どもである私のほうが、
「お母さん、トイレは済んだの?大丈夫?」
と訊くという逆転現象が起きたりする。

母は「戌年なのでしょうがない」などと嘯きつつ、
頻繁に困った事態を引き起こしていた。

一番の問題は、うちで免許取得者は母だけということだ。

「あー!チビる!もうアカンわ、もうチビる!」
などと叫び、信じられないほど激しい貧乏揺すりを始める。
車全体が、それに合わせて激しく揺れる。

そのうち、
「今事故起こしたら、チビってもバレへんな・・・」
と怖いことを言い出すので、同乗者は気が気じゃない。
もう、こんな女に免許を授けた、国家が憎いっ。

ある時、それはあろうことか、高速道路で起こった。
父は「なぜ済ませておかぬ」と今更しょうがないことを言い、
「お前みたいな運転もできん男に、偉っそうに言われたない!
道路へ突き落とすぞ、ハゲ!」
と母が応戦する。

女らしい父は、大人しく黙ったが、口喧嘩に勝ったところで
母の尿意が止まるわけではない。
「もう限界、ホンマにもう限界じゃ・・・」
と小さくつぶやいたかと思うと、助手席の父に、
「ドアロック開けとけ。開けぃちゅうに!さっさとせぃ!」
と怒鳴った。

「な・・・何をする気や・・・!」
と、怯えて父が訊ねる。先ほどのやりとりの後なので、
本当に突き落とされることを懸念したのだ。
が、そうではなかった。

車の中でどん引きしている父と私の横でじょぼじょぼと音がしています

母は路肩に急停車した。
尿意から解放される唯一の方法を、実行するために・・・。

人類としての最低限のはじらいとして、
後部座席と助手席のドアを目隠にしたかったのである。
が、この方法だと、父は何の仕切りもなく、
母の用足しに接することになる。

「や、やめてくれ、俺の隣でするなぁぁーーー!」
絹を裂くような父の悲鳴が、「ジョンボリジョボジョボ」
という母の放尿の音にかき消される。
一体どこにそんな量を溜められるのか、という程の
謎の黄色い液体が、小川を成す。

「・・・最悪だ・・・悪夢だ・・・」
父は少女のように、目を瞑ってしくしく泣き始める。

が、泣いている場合じゃなくなった。
車が、勝手に動き始めていたのである・・・。
母は尿意に慌て、サイドブレーキを引き忘ていた。

車は前に動き、母の身体で後部座席のドアが閉まった。
こちらを鬼の形相で睨みながら、
尻もなにも丸出しにしつつ、それでも小川作りはやめない
我が生みの母が、徐々に小さくなっていく・・・。

その横を、他所の車がビュンビュン通り過ぎる・・・。
母はジョボジョボ、車はビュンビュン・・・言うてる場合か!

「ちょっと、お父さん、何とかして!止めて!」
私は焦って叫んだ。ほんと、なんとかして。色んな意味で!

が、父は免許がないため、サイドブレーキを引くという
知恵が出ず、あわあわしていただけだった。
・・・マジで使えねぇ。

母が大河作りを終えて運転席に戻った時、
ブレーキのことで再びケンカになったことは、
言うまでもない。

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    いつも母の悪口を書いているので、たまには楽しい母を
    書こうと思ったら、やっぱり違う意味で悪口という・・・(笑)。
    だって、本当にこういう人だったんだもん・・・。

    しかもこの話、多分続編がある・・・(汗)。

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    やっぱり続編あり(笑)。↓
    http://toripy.com/archives/1139